喫煙との関連が明らかな健康問題は
喫煙は数多くの疾患に関する病態や死亡のリスクを高めます。
一般に、喫煙者は非喫煙者と比べて死亡率が約2倍高いと言われています。そして、そのリスクは喫煙量とともに高まります。
喫煙はすべての癌症例の25~30%の原因となり、喫煙に関連する悪性腫瘍として・・・
- 肺
- 口腔・咽頭
- 食道
- 胃
- 膵臓
- 膀胱
- 腎臓
- 子宮頸癌
などが挙げられ、おそらく急性白血病と大腸癌も関連性があります。
特に肺癌では、男性症例の90%、女性症例の78%に喫煙が関係しています。
喫煙は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最も重要な危険因子であり、一度も喫煙したことのないCOPD患者はわずか5~10%にすぎません。
さらに、心疾患による全死亡の20%が喫煙に起因すると推定されています。
喫煙し経口避妊薬を服用している女性で、特に35歳以上の場合は心臓発作や脳卒中のリスクが高くなります。
禁煙によって期待される健康上の利点は
禁煙すると有意義な健康上の利点が得られ、一般的に禁煙した人は喫煙を続けた人よりも平均的に長生きします。
50歳以前に禁煙した人は、喫煙を続けた人と比較して、その後の15年以内の死亡リスクが半分になると報告されています。
禁煙した人の肺癌リスクは、禁煙後10年で、現喫煙者より30~50%低くなります。
5年間禁煙を続けた人では喫煙し続けたのと比較し、食道癌のリスクが半分になり、子宮頸癌や膀胱癌のリスクも低下します。
禁煙後最初の1年で心臓の病気のリスクが50%低下し、2~3年で一度も喫煙しなかった人々と同等になることが示されています。
禁煙により、慢性の咳は100%近く消失し3ヶ月以内に呼吸器機能は改善します。
禁煙が難しいのはなぜ(ニコチン依存症かも?)
禁煙が難しいのは多くの理由がありますが、最大の理由はニコチンの常習性、依存性が高いからだと言われています。
喫煙するという習慣は多くの喫煙者にとって心地よいもので、タバコに手を伸ばし火を点け、吸うという動作が日常生活の一部になっています。
禁煙することにより、ニコチンの禁断症状(離脱症状)が現れ、禁煙72時間後が最も強く、その後2〜8週間はニコチンへの渇望が続くと言われています。
この、ニコチンの禁断症状こそが、禁煙を難しくしている大きな要因です。
禁煙治療の薬物療法とは
禁煙の意欲が充分にあり、タバコの年数、本数とニコチン依存度の判定をして、薬物療法を開始します。
禁煙治療の薬物療法の目的は、ニコチンの禁断症状(離脱症状)を和らげる(緩和させる)ことです。ニコチンを補充する方法は貼り薬(ニコチンパッチ)です。
飲み薬(チャンピックス)は、タバコを吸った時に感じられる快感を控えめに生じさせることにより、ニコチン切れ症状を軽くさせ、さらにタバコのニコチンをブロックすることにより、うっかり禁煙中に一服してしまった時にタバコをおいしいと感じにくくします。
いずれも、健康保険で12週間に計5回通院します。医師に相談無く中断しないことが大切です。
自分の力だけで禁煙できると考えて治療を中断すると、禁煙は失敗しやすくなります。
初回の治療だけで中断した人が、禁煙を続けているのはわずか6.5%ですが、12週後まで受診した人では49.1%と7.5倍に増加し、2人に1人が禁煙していました。
平成25年度の当院での禁煙成功率は約80%でした。
(保険診療の費用は、合計5回で2万円以内です)